hirax.net::恋の固体物理学 前書き編::(2000.02.05)

恋の固体物理学 前書き編 

シリコン・エイジの恋


 これまで、様々な「恋の形」について考えてきた。古くは、

であったり、あるいは、であったりした。

 最近の「恋の力学」シリーズでは、初めに男と女の間の「恋の二体問題」を考え、そして二人の男と一人の女の間の「恋の三体問題」を考えてきた。しかし、それらの「恋の力学」が取り扱ってきたものは、ごく少数の登場人物により演じられる物語を解析したものである。また、特に「男」と「女」の間に性質的な差がないものとして、解析を行ってきた。

 このような解析の前提条件、

  • ごく少数の登場人物
  • 「男」と「女」の間に性質的な差がない
というのは一般的に成り立つわけではない。もちろん、それらの条件が成り立つ場合も多いが、成り立たない場合も多い。そのような場合、つまり
  • 数え切れない多数の人物が登場し
  • 「男」と「女」の性質の間に差がある
場合の解析を行っていくにはどうしたらいいだろうか?

 例えば、

  • 「男」も「女」も結構人数はいるのであるが、その数がかなり違う。
というのは、どうだろうか。現在、「男」の数は「女」の数よりもはるかに多いので、この例えはそれほどおかしなものではない。また、
  • 「男」が諸星あたるのように、やたら行動力があるが、「女」の方ははなかなか動かない
とかの場合もあるだろう。そして、また
  • 恋人達に何かのショックを与えると分かれてしまう。
などのカップル崩壊現象もある。このような現象も実に面白い現象である。また、「男」と「女」がカップルになる「カップル」再結合現象も興味深い問題である。例えば、
  • その場の雰囲気でカップルになっちゃった
というような現象も現実にはある。このようなカップル「結合」は摩訶不思議と言わざるをえない。

 こういった色々なことが「恋の物理学」では起きる。しかし、

で書いたように、夏目漱石の時代に作り上げられた「恋の力学」ではそのような現象の解明は困難である。

 そこで、新たな「恋の科学」の分野を作り上げ、そういうことについて考えを巡らせていきたい、と思う。とはいえ、いきなりやるのは私には難しい。そこで、まずは解析のための準備をしていきたい。

 というわけで、本シリーズは題して、「恋の固体物理学」である。先に述べたような「不均等な恋の挙動」を例えば半導体工学のような固体物理学のテクニックを用いて解明したいと思うのだ。割に単純な「恋の力学」シリーズとは別に、「恋の固体物理学」シリーズを始めたいと思うのである。

 普通に考えるならば、 - 何故「恋」の挙動解明に、半導体工学? - と思われるかもしれない。確かに、唐突であるとは思う。しかし、考えてみればそれほど不自然ではない。何しろ、現在はシリコンの時代であると言われる。
 プラスティック・エイジを経て、現在はシリコン・エイジが世界を支配している。シリコン= 半導体技術により、世界は動いているのだ。そうであるなら、「恋に動かされる人」の挙動も、、半導体技術を用いることにより解き明かすことができるかもしれない。(いや、もちろん今考えた理屈である。簡単に言えば、こじつけである。)

 そしてまた、「恋」は一般的に(例外はあるが)

により形作られるが、半導体工学も、同じように二つのモノたち
  • プラスの「正孔(ホール)」
  • マイナスの「電子(エレクトロン)」
により形作られる。全く同じである。また、先の
  • 「男」も「女」も人数はいるが、その数がかなり違う。
という条件、例えば、「女子校の中の男教師」という状況(この逆のよくあるケースとして、「ほとんどが男子学生の理系学部の中の女子学生」というケースがある)などは不純物がごく少量ドーピングされた不純物半導体そのものである。

 そのような理屈で半導体工学と関連づけながら、「恋の固体物理学」について考えてみたいと思う。

 このシリーズは少しヘビー(私にとって)なので、今回は前書きのみに留めたい。これから公開予定の作品群を紹介すると、

  • 恋の固体物理学 恋のバンドギャップ編 - 彼女の防護壁を突破しろ! - (仮称)
  • 恋の固体物理学 恋のドーピング編 - 女子校の教師はパラダイスか? - (仮称)
  • 恋の固体物理学 恋の熱励起編 - 別れたくなかったら頭を冷やせ - (仮称)
  • 恋の固体物理学 恋のp-n接合編 - 一方通行の恋の行方 - (仮称)
  • 恋の固体物理学 恋のEinsteinの関係式編 - 本気と浮気の境界線 - (仮称)
といった感じになる。

 まだまだ続く「恋の力学」シリーズと共に「恋の科学」を作り上げていきたいと思う。

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