hirax.net::Remorsus::(2000.09.29)

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或るMail


 



 藤原正彦の「数学者の言葉では」を本棚から引っ張り出して読んでいる。読み直したかったのは冒頭の「学問を志す人へ--- ハナへの手紙」だ。

 この中で藤原正彦は学問(きっとそれは他のものでも同じことだろう)を志す人に対して、情操生活を犠牲にしているという事実を確認し、額に刻印をほどこした上で、学問に打ち込んで欲しい、と語る。そして、それがかけがえなく大切なものを犠牲にして進む人間のぎりぎりの免罪符であって、その免罪符はいつか必ず返すべきものだ、と語る。

 そして、「自分を欺かなければ学問を続けられないなら学問なんか止める」というハナに対して何故か感情的になってしまった過去を振り返りながら、

 ハナからの手紙を手にする度に、私自身の中にある「どうにか眠らせている痛み」を、覚醒してしまいそうな気がした。そんな時にはまず狼狽し、ついで危険を感じ、自衛手段としてハナの態度に憤慨したりした。
と書いている。
 

 この文章をどうしても読み直したかったのには理由がある。私も同じように感情的になってしまったからだ。藤原正彦のような学問のことではないけれど、やはり私にとっては同じような理由で狼狽してしまった。そして、少なくとも冷静に考えてみれば、ひどく間違っているMailを出した。そうはいっても、後悔してももう遅い。もう少しの間、この場所であの免罪符を信じてみることにしよう。
 

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