hirax.net::inside out::2016年02月19日

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2016-02-19[n年前へ]

『フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展』は面白い! 

 今日から五反田のDNPミュージアムラボで始まった、BnF × DNP ミュージアムラボ 『フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展』を観に行った。とても、個人的にとてもさまざまな視点から面白かった(素晴らしかった)ので、取り急ぎ簡単なメモ書きをしてみることにする。

 遙か昔から、広い宇宙の中に丸い地球が存在する、ということは周知の事実だった。「平らな地球」なんていう考え方は、少なくともヨーロッパ的世界観から言えば、19世紀に作られた伝説で、すでに地球は丸いと、多くの人が経験的に知っていた(海の水平線の向こうに船が消えるときのようすや、月食時に月が三日月になるようすなどから、当然のごとく丸い地球は認知されていた)。

 空に浮かぶ星空は、(太陽や惑星を除けば)丸天井のように相互の位置関係を変えず、一年周期で巡ってくるように見える。その中に丸い地球が囲まれているらしい…というわけで、当然のごとく(丸い地球を描いた)地球儀と(周囲に浮かぶ星空を固定的に描いた)天球儀という一対の存在が生まれる。17世紀、ヨハネス・フェルメールが「地理学者」や「天文学者」に描いたのは、そんな地球儀と天球儀だった。…とはいえ、地球と宇宙の関係を、もう少し具体的な模型として表した「アーミラリ天球儀」のような存在は、いわゆる天球儀と地球儀の間を繋ぐ存在として不可欠のものである。

 さて、『フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展』は、大日本印刷(DNP)がフランス国立図書館(BnF)の地球儀・天球儀コレクションを3Dデジタル化したものだ。具体的には、回転ステージの上に(台座から外した)地球儀や天球儀を載せて、それを配置を変えつつデジカメで(1台のカメラに対して左右におよそ80度の角度で配置された点光源下で、おおよそ500枚ほど)撮影し、それらの画像をステレオフォトメトリック的に三次元座標や色を復元したようだ。ちなみに、情報復元に用いられるカメラの撮影画角は、照明とカメラの位置関係(と対象物が球形状であること)を考慮して、(地球からしてみると)緯度経度にしてプラスマイナス20度弱程度の領域が用いられていた。つまり、(その程度の画角の)かなりの重複を含む500枚程度の画像群から、3次元的な画像を時でたるアーカイブしたものである。

 地球を囲む星空は、天球儀という「外側と内側をひっくり返して眺める形態」で表現するのは不自然極まりない。そこで、今回は、ヘッドマウントでスプレイであるHTC VIVEを使った5分弱の展示を行っている。これはとても素晴らしい。地球を包み込む星空を、球として外側から眺めるのは、やはり不自然極まりない。だから、今回の展示は、このVR展示を眺めるためだけに見に行っても良いと思う(ただし、上下方向と左右方向の遠近感の違いが一致しておらず…おそらくレンダリングソフトのアルゴリズムに単純な問題があるようにも思われた。ついでに言うと、HMD展示の近くにある、大画面ディスプレイを使った両手でのジェスチャー認識を必要とする展示は、ユーザーインターフェイス的に最悪なので、改善するか・もっと単純だが有効な展示に入れ替えるべきだ)。

 (展示自体とは全く関係無い部分で)とても驚いたことが、(地球儀や天球儀を台座から取り外してデジタルカメラで撮影する)500枚という枚数だ。作業ビデオを観ていると、回転ステージに載せての撮影においてずいぶんと手作業が多ように見え、(偏見100パーセントで書くと、長時間の労働を決して好まないようにも思える)フランス国立図書館の学芸員とともに長時間の撮影時間を要するように思われた。こうした展示には現れていないものの、そうした撮影時間を可能にしたビジネス的な契約もとても興味深かった。

 何はともあれ、JR五反田駅から徒歩五分ほどの距離で、完全予約制でじっくり・ゆっくり眺めることができて、そして無料の展示会なので…興味ある人はぜひ行ってみると良いと思う。本当に素晴らしい展示会だと思う。

『フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展』は面白い!『フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展』は面白い!