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2009-07-24[n年前へ]

「わかりやすい文章」を書く方法 

 サーバ整理をしていたところ、(自動書きこみロボット対応が面倒で閉じて)PukiWikiに前に書いた文章群が出てきました。その文章群の中から、今日は「わかりにくい文章を書く方法(本当は「わかりやすい文章を書くにはどうしたら良いか」という試行錯誤の記録)」を書き直しておきます。

「わかりにくい文章」の例と対策

言葉が足りない:主語がない
 日本語では主語がなくても一見不自然に感じない。 しかし、それでは自分が考えていることを人に伝える場合には非常に曖昧になってしまう。だからこそ、主語は省略せずにはっきりつける。

言葉が足りない:比較をする言葉を使いながら、比較対象や比較基準が書かれていない
 たとえば、「良い傾向」という言葉は、どういった基準どういった視点で「良い」のかが書かれていなければ意味不明になる。あるいは、比較対象は何なのかがわからなければ、主観的としか言いようがない言葉になる。
 説明者・書き手がどういう視点から眺めているのかを、明示しよう。聞き手・読み手に判断を任せてはいけない。以心伝心なんか幻想でしかない。
 ちなみに、説明者・書き手自体が視点をはっきり設定していない場合(考えていない場合)にこんな症状が出がち。

言葉が足りない:「比」較をする言葉を使いながら、その「比」が書かれていない
 「精度」のような「比」を意味する数字が出てくるのに、その比較対象を意識していない。「ノイズの大きさ」と言うなら、「シグナルの大きさ」を出さなきゃ意味がない。
→「20cm定規で東海道五十三次の距離を計る」のと「20cm定規でミトコンドリアの大きさを計る」のは全然違う。

言葉が足りない:数字に単位がついていない
 何を基準・単位とした「数字」なのかをはっきり意識する。 口頭で喋る時にも、単位は必ず言う癖をつける。

言葉が足りない:「その言葉で何を意味しているのか」が曖昧でわからない
 言葉・単語の意味をきちんと定義せずに使うと、この症状が頻発する。
 対策は、「言葉の意味ははっきりさせる」。「言葉の意味をはっきりさせる」ためには、他の言葉で言い直すことができなければならない。なぜなら、「言葉の意味を(言葉を使って)はっきりさせる」ためには…、当然他の言葉で説明するわけですから。

「他の言葉で言い換えられない」=「理解していない」
Aさん: 「○×△**○×」
Bさん: 「他の言葉で説明してみてもらえます?」
Aさん: 「…」

 この場合、Aさんは「自分が語ろうとしている内容」の説明ができないだけでなく、本当のところは「自分が語ろうとしている内容」をきちんと理解していないことがわかる。

典型的な「理解が足りない会話」
Aさん: 「○×△**○×」
Bさん: 「そういうことですよね」
Aさん: 「…」

 本来であれば、BさんはAさんの語った内容を「自分の言葉で置き換えて話して、自分の受け取った内容=相手が話したつもりの内容、であるかを確認」しなければならない。しかし、「そういうこと」なんて表現で相手の語った内容を言ったつもりになっているのでは…、BさんはAさんの語った内容を理解していないことは間違いない。

話が整理されていない:同じ内容のことが意味なく繰り返し書かれている
 同じ内容が必要なく繰り返され、本来必要なことが書かれていない文章がよくある。このようなことが起きるのは、(問題)質問に対する「答」が「質問(問題)内容」と同じになってしまっているケースが多い。これは、表現の仕方の問題ではなく、考え方自体の練習が必要。
例:
: 質問:「動作速度が速いソフトウェアを作るにはどうしたら良いですか?」
答:「動作速度が遅くないソフトウェアを作ります」

論理が飛躍する
 技術者が書かなければいけない文章は散文詩ではない。「ワープ」が許されるのは宇宙戦艦ヤマトの「帰り」だけ(古い)。一歩づつ「(文章の)視点」の移動はすべき。内容が「飛ぶ」と、読者は絶対に(文章の)内容を追いかけられない。
 まずは…、文はできる限り短く、から始める。論理を飛躍させないためには、形から入るのも有効。
 簡単な文を積み上げないと、複雑なことは説明できない。「複雑」なことをしたければ、「簡単」なことをやる。「簡単」なことができないのに、「複雑」なことができるわけなんかない。簡単ができなければ、複雑なことは絶対にできない。

機械的に自分の文章をチェックしよう
 中身を読んだり理解したりする必要はない。「主語のない動詞(名詞)」「比較対象が書いてない比較」「何の視点からが書いていない形容詞」があるかを機械的にチェックしよう。
 もし、そんな「言葉」が入っていれば、そこを直したり補足したりする。すると、自動的に、内容がわかりやすくなるはず。

足りていない情報について考えよう
 「自分の書いたもの」の中に、「自分が気づいていない長所」なんか絶対に隠れていない。もし、そんなものがあったとしても、「自分が気づいていないもの」を自分で見つけ出すことはまず不可能。
 「自分の書いたもの」の中から自分で見つけ出すべきものがあるとしたら、それは「自分の気づいていない短所」である。「自分の書いたもの」を眺めるときは、そこから「良いところ」を見つけ出すのではなく、悪いところを見つけ出すことに注力する。
 文章から「悪いところ」が少なくなってくると、文章のS/N比(良いところ/悪いノイズ)が上がることで、「良いところ」が他の人(や自分自身に)に見えてくるようになる。

章・節の「タイトル」は名詞句でなく一文で書こう。
 (少なくとも最初のうちは)タイトルは名詞句でなくて、簡潔な一文にすると判りやすい。すると、タイトルを並べたアウトラインが(自動的に)要約文になる。そのタイトル要約文がわかりやすくなるようにすれば、全体の構成が良くなる。それだけでなく、その章・節で書かなければいけないことを、自分自身がよく意識することができる。もちろん、文章を読む人にとってもわかりやすい。



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