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2010-01-26[n年前へ]

知らないことは知らないと言おう。 

 太宰治の(「パンドラの匣」と「正義と微笑」が収録されている)「パンドラの匣 (新潮文庫) 」のAmazonレビューから。

 世にある(太宰治)のイメージは、「人間失格」や「桜桃」の虚無的な人なのでしょうが、太宰は意外に軽みと明るさのある人であったな、と、大人になった今は思います。
 私が始めて読んだ太宰は「正義と微笑」でした。前向きな、爽やかな青年の姿がかかれています。しかし、その底流には、病気と闘っていたり、繊細な心で色々なことを考えたりするといった、陰の部分もあるわけです。
 この小説を読むと、何かと戦いながら、軽やかな明るさをつかんでいく青春の姿を感じます。それは、まるで夜明けの寂しい明るさのようです。けれど、そこには(ほのかな)希望の光が見えます。

 「正義と微笑」の冒頭と最後を抜き出してみる。

 ぼくは、きょうから日記をつける。この頃の自分の一日一日が、なんだか、とても重大なもののような気がしてきたからである。人間は、十六歳と二十歳までの間にその人格が作られる、ルソーだか誰だか言っていたそうだが、あるいは、そんなものかもしれない。

 「正義と微笑」の冒頭節から
 まじめに努力して行くだけだ。これからは、単純に、正直に行動しよう。知らないことは、知らないと言おう。できないことは、できないと言おう。思わせ振りを捨てたなら、人生は、意外にも平坦なところらしい。岩の上に、小さい家を築こう。
 僕は、来年、十八歳。

 「正義と微笑」の最終節から



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