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2008-07-14[n年前へ]

「メディアの特性」と「制御工学の安定性」 

 渋谷で飲んだ帰り、道玄坂の坂を駅に向かって下っていくと、隣を歩く人が「あんな風に名づけ、メディアが取り上げるから、そんなものが増えてしまうんですよね」と言った。メディアに関わるその人が、そんなことを言った。その人の視線の先を眺めると、渋谷駅前のビルの上に「モンスターペアレント」という広告が大きく光っていた。

 光る広告を見た後に、「1,2ヵ月前のログに、検索語として、漂白剤や洗浄剤の商品名が多かったこと」をなぜか連想した。その検索語を示す何桁にもおよぶ検索ログを見て、「メディアが名づけ・報道すること」や「検索サービスがユーザに与えるもの」について、考えさせられたことを思い出した。

 その言葉を聞き道玄坂を下りつつ、「制御工学のフィードバック」を考えた。「出力(結果)を入力(原因)側に戻す」ことを意味するフィードバックにおいて、「出力の増加が入力の増加をさらに生む」ような「戻し方」を正のフィードバックという。

 正のフィードバックが働いている場合、(特に系のループ利得が1を越える場合)何らかの破綻が起こるまで出力が増大しつづける。また、この領域では初期値の違いが時間の経過にしたがって無限に引き伸ばされるため、僅かな初期値の違いがシステムの挙動を大きく変える(カオスな振る舞いとなる)場合がある。これは複雑性や多様性を生み出す原動力となりうる。
 そして、その逆に「出力の増加分を入力を減らす」ように働く、出力(結果)の入力(原因)側への戻し方を「負のフィードバック」と呼ぶ。
 負のフィードバックが働く場合は、フィードバック系の増幅率は裸の増幅率より小さな値となる。この増幅率の余裕分の範囲で、出力の増加は増幅率を引き下げるように働き、出力の低下は増幅率を引き上げるように働くので、出力の変動を抑えることができる。(不安定性を消し、安定にすることができる)

 電子機器・メカ機器で多く使われるフィードバックシステムは、「負のフィードバック」だ。なぜなら、それにより「システムの安定化」を実現化することができるからである。逆に言えば、そういう風にシステムを作らなければ、安定して機器を動かすことはできない。

 その一方、ユーザーインターフェースをつかさどる機器は、「正のフィードバック」として動くものも多い。たとえば、車のハンドルを動かすパワーステアリングなどは、入力の増幅が出力の増幅を生み出す「正のフィードバック」システムだ。少ない力で人の手助けをするシステムを作ろうとするならば、「正のフィードバック」を使うのが自然で人に優しい、というわけである。そういった、ユーザの反応を増幅拡大して見せるポジティブ・フィードバック系が多い。

 ユーザの操作・反応がとても重要であり、同時にマスメディアでもあるようなツールを作ろうとするときには、この「フィードバック」特性を意識することは、きっと何かの知見を与える、と思う。「正のフィードバック」と「負のフィードバック」、そして、それらのフィードバック・システムが生み出すシステム、そういったものの挙動をシステムに関わる人々が想像してみることは、きっと何かの役に立つのではないだろうか、と思う。

 どちらが良いとか悪いといった単純な二元的な話ではなくて、複雑なシステムの挙動に対して道具が与える影響を考えてみることはきっと無駄にはならないだろう、と思う。

2009-05-26[n年前へ]

「静電気体質」を「衣服生地と人体皮膚の摩擦帯電系列」から眺めてみよう 

 もうすぐ梅雨が始まります。私のような静電気体質の人は、湿気を感じる季節になると、ちょっと気楽になったりします。それは、湿度が高いと摩擦帯電しにくくなるからです。などと書くと、「静電気体質」って何だろう?という疑問が湧いてきます。

床や靴裏が摩擦され合うと、摩擦帯電が生じて、片方が+(プラス)にもう片方が-(マイナス)に帯電したりします(たとえば右上の写真は、そういったことを防止するための静電気帯電防止機能付きカジュアルシューズ です)。あるいは、来ている服と座っている椅子などの間でも摩擦帯電が起きたりします。「静電気体質」というのは、そういう靴や服選びによるものなのでしょうか?

 「新しい衣服衛生 」の頁をめくると、「衣服生地と人体皮膚の摩擦帯電系列」のデータがありました。そこに書かれていた内容を大雑把に図・グラフにしたものが、下図になります。

 たとえば、ナイロンはプラスに、カネカロンはマイナスになりやすいわけです。こういう、他の物質との相対比較として、どの程度プラスやマイナスになりやすいか、という順番を摩擦帯電系列と呼びます。ちなみに、摩擦帯電系列は湿度などによっても、順番が入れ替わります。

 意外なことに、人体皮膚は(人によっても違うようですが)およそ羊毛からテトロンの間に広く分布していることがわかります。それぞれの人の、その時の状態によるのかもしれませんが、ひとことで同じ「皮膚」といっても、帯電性には人それぞれ差があるようです。摩擦帯電系列上での、来ている服と皮膚との関係にもよりますが、服と皮膚間の摩擦帯電では、摩擦帯電しやすい人、しにくい人という「体質」がある、のかもしれません。

 さて、とりあえずは、皮膚と衣服の摩擦帯電をさせたくない、と思う「静電気体質」の人は、自分の皮膚と衣服生地の摩擦帯電序列を合わせてみるのはどうでしょうか。つまり、ビニロン・やレーヨンや羊毛あたりと皮膚を擦り合わせてみて、静電気が発生しない組み合わせを探し、それを(摩擦帯電的に)自分にあった生地・繊維と覚えておくのです。そして、服を買いに行った際には、その生地や繊維で作られた下着や服を買うようにすることで、「静電気体質の人に優しいファッション」ができる、というわけです。

 もちろん、服と服、あるいは服と他の生地、あるは靴裏と床・・・といった他の摩擦帯電の方が、あの痛い「静電気のバチッ」を作り出している、のでしょう。けれど、自分の皮膚と他の人の皮膚を触れ合わせてみた時に、片方がプラスに、もう片方がマイナスに摩擦帯電する、なんて考えてみると、何だかとても面白いような気がします。

衣服生地と人体皮膚の摩擦帯電系列






2009-11-21[n年前へ]

消費者物価指数とポジティブ・フィードバック 

 景気の変化をわかりやすく眺めてみたくなったので、 日本の消費者物価指数(CPI)のグラフを張り付けてみた。このグラフは、右下部にある小さなボタンを押すことで、表示する内容を切り換えることができるものである。

 このグラフには、1ページ目に「主な消費者物価指数(前年同期比)の推移」が、2ページ目に「主な消費者物価指数の推移」が、3ページ目に「消費者物価指数と前年比の推移」が収録されています。

 2ページ目や、3ページ目を眺めると、ここ2,3年は、実に単調に消費者物価指数が低下し続けていることがわかる。この消費者物価指数低下が続くことの要因は、一体どんなものがあるのだろうか。新聞記事をしっかり読んでいれば、その要因分析結果などが解析・解説されているのだろうか。

 ・・・それにしても、と思う。経済社会はどう考えても、制御工学的にはポジティブ・フィードバックの不安定極まりない世界に思えてならない。少しの外乱が、大きな変動を生み、その変動がさらに激しい波を生むようにみえる。もしかしたら、そこには結構長いムダ時間があったりして、意外にセンシティブではないのかもしれないが、やはりポジティブ・フィードバックの不安定な状態に見える。かといって、安定を実現するネガティブ・フィードバックでは、永遠に一定で変わらない世界になってしまう。おそらく、それでは何の発展もなく進化さえしない世界になってしまうかもしれない。

 ポジティブ・フィードバックからは安定な状態は生まれない。上がり続けるか、下がり続けるかで、結局は「発散」してしまうことになる。

 次に平積みされる本が、もしも「節約ライフ」的な本だとしたら、景気にはまさにポジティブ・フィードバックが働いていることになる。それらの書籍は、不況への後押しをするポジティブ・フィードバックである。「ポジティブ」という名前が付けられた、しかし、それは同時に不況への案内図なのかもしれない。

 以前は途中で挫折したが、もう一度、経済学の教科書に書いてあることをMatlab/Simulinkで実装しつつ、学んでみよう。

2010-07-14[n年前へ]

「正のフィードバック」と「負のフィードバック」 

今日の「n年前へ」から。

 電子機器・メカ機器で多く使われるフィードバックシステムは、「負のフィードバック」だ。なぜなら、それにより「システムの安定化」を実現化することができるからである。逆に言えば、そういう風にシステムを作らなければ、安定して機器を動かすことはできない。

 その一方、ユーザーインターフェースをつかさどる機器は、「正のフィードバック」として動くものも多い。たとえば、車のハンドルを動かすパワーステアリングなどは、入力の増幅が出力の増幅を生み出す「正のフィードバック」システムだ。少ない力で人の手助けをするシステムを作ろうとするならば、「正のフィードバック」を使うのが自然で人に優しい、というわけである。そういった、ユーザの反応を増幅拡大して見せるポジティブ・フィードバック系が多い。

 ユーザの操作・反応がとても重要であり、同時にマスメディアでもあるようなツールを作ろうとするときには、この「フィードバック」特性を意識することは、きっと何かの知見を与える、と思う。「正のフィードバック」と「負のフィードバック」、そして、それらのフィードバック・システムが生み出すシステム、そういったものの挙動をシステムに関わる人々が想像してみることは、きっと何かの役に立つのではないだろうか、と思う。


「メディアの特性」と「制御工学の安定性」

2010-10-02[n年前へ]

「ポジティブ」と「ネガティブ」を適度に混ぜたフィードバック・ループ 

 先日テレビ番組で高橋英樹さんが、「自分が出演したドラマは見ないようにしている。見返すと、どうしても―あぁ、もっとこうすれば良かった-とか後悔してしまい、落ち込んでしまうから」と言っていました。高橋英樹さんほどの人でも、そんな風に感じるのかと、その言葉が強く印象に残りました。

 制御設計をしようとする時に用いる「フィードバック制御」は基本的にネガティブ・フィードバックです。理想から自分がズレている分を打ち消すように、負のフィードバックをかけることで、目標・理想の通りの動きにしようとするわけです。もしも、逆のポジティブ・フィードバック制御動作にしてしまったとしたら、発振してしまい、とんでもない動きになってしまいます。

 高橋英樹さんの「自分が出演(つまりは主演ですね)したドラマは見ない」という言葉を聞いて、意外にネガティブ・フィードバックは人(自分)に対しては良くないのかもしれない、と考えました。理想を追求するのはいいけれども、理想からの大きなズレを眺めてみても、落ち込んでしまうだけかもしれないな、と感じたのです。

 そして、そんなことを考えている内に、ふと我に返りました。高橋英樹さんの言葉のうち、もしも、その印象に残った部分だけを自分にフィードバックさせようとしたら、それは自分に都合の良いポジティブ・フィードバックになってしまうのではないだろうか?とも感じたのです。

 自分に対してフィードバック・ループを作る時には、「ネガティブ」に偏っても「ポジティブ」が多すぎてもマズイのでしょうか。もしも「ポジティブ」と「ネガティブ」を適度に混ぜたフィードバック・ループを作るとしたら、どんなバランスになるでしょうか。



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