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2012-01-28[n年前へ]

「貿易赤字額」と「原油価格推移」をグラフにして眺めてみよう!? 

 「貿易赤字」についてのニュースや記事を見ても、なかなか意味がわからなかったりします。そんな時、「ことばだけの説明」や「短いコメント」では何がなんだかわからないよなあ…と考えます。

 そこで、「貿易赤字」について「学んでみよう!」と思い、まずは財務省貿易統計ページから貿易収支のデータを取得して、輸入額・輸出額の推移をグラフにしてみました。

 なるほど、確かに輸入額が輸出額を超えています。しかし去年がどうというよりは、ここ何年もの間「輸出が停滞している」ようにも見えます。また、リーマンショック前後など、それとは異なる、遙かに大きな動きも実感することができます。

 さて、次は、輸入金額の内訳(財務省貿易統計)を項目に分けてグラフにしてみることにします。

 すると、原油と石油製品が卓越していることがわかります。しかし、その動きは、去年1年の間の動き(震災の影響)より、もっと違う「動き」の方が大きな影響を与えているようにも感じられてきます。

 そこで、さらに原油価格の動きもグラフにしてみました。それが、下のグラフです。

 原油輸入量(金額)=数量(輸入量)+単価(原油価格)ということになるのでしょうが、原油入金額の推移に関しては(輸入量)よりも、原油価格の「揺れ動き」の方が遙かに大きく卓越しているように見えて・感じられてきます。

 少なくとも、「短いことばによる説明」では何も実感できないことであっても、「眺めてみる」ことで自分なりに何かわかったり・感じたりすることができるものです。…というわけで、今日は「貿易赤字額」と「原油価格推移」をグラフにして眺めてみました。


参考:2011年の石油と石油製品の輸入(数量、平均単価との関係)
参考:2009~2011年の化石燃料の輸入(輸入量と輸入額)

2012-02-05[n年前へ]

「2011年の貿易赤字理由を知る」ために作るグラフ 

 「貿易赤字額」と「原油価格推移」をグラフにして眺めてみよう!?を受けて、2011年度「日本の化石燃料の輸入量・輸入額」を計算したグラフが作成されていました。つまり、去年の日本の輸入額が増えたのは、「燃料の輸入量が増えた」影響が大きいのか、それとも、「燃料の価格が上がった」影響によるものなのか…「そんなことを知りたい」というグラフです。

 これは、「2011年の貿易赤字理由を知る」ために作るグラフです。こうしたグラフを(自分の手で)作り・(自分の目で)眺めた後は、「貿易赤字が原発に起因する輸入量増加によるものである」という報告資料の方を眺めてみると、色々なものが見えて、そして参考になるのかもしれません。

 2011通年の統計が出ていたので計算してみたところ、やっぱり価格上昇が輸入額上昇の主原因と思われる。貿易赤字を原発に起因する輸入量増加に結びつける説はあやしい。

2012-02-11[n年前へ]

「2011年の貿易収支赤字」主要因は「原発停止による燃料量増加」ではありません 

 「貿易赤字」についてのニュースや記事を見て「違和感」を受けました。それは、たとえば、こういった「内容」です。

 財務省が25日発表した2011年の貿易統計(速報)によると、輸出額から輸入額を引いた貿易収支は2兆4927億円の赤字だった。貿易赤字は31年ぶりで、第2次石油危機で原油価格が高騰した1980年以来だ。東日本大震災や円高、タイの洪水で輸出が減る一方、原発停止に伴って火力発電燃料の輸入が急増した。

朝日新聞デジタル
 違和感を感じたのは、「原発停止に伴って火力発電燃料の輸入が急増した」という一文でした。「原発停止に伴って増加する」というとき、「増加する」ように思われるのは火力発電燃料の使用「量」です。しかし、貿易収支の話の中で、「火力発電燃料の輸入が急増した」となれば、その文がまず意味するだろうことは、「火力発電燃料の輸入”額”が増加した」という内容です。
輸入「額」=使用「量」×輸入単価
という関係はありつつも、決して輸入額と使用量はイコールの「量」ではありません。つまり、この「原発停止に伴って火力発電燃料の輸入が急増した」という一文は、前半と後半で「話題にしている量」がすり替わっているように感じられてしまうのです。

 そこで、「貿易赤字額」と「原油価格推移」をグラフにして眺めてみると、日本の輸入額の推移を決めているのは、原油・石油製品の輸入額変動であって、その原油・石油製品の輸入額変動は、(輸入「量」ではなく)原油価格変動であることが見えてきます。

 つまり、去年の日本の輸入額が増えた一番の要因は、「燃料の輸入量が増えた」ということでなく、「燃料の価格が上がった」からなのです。天然ガスの輸入量は増加していますが、そんな天然ガスでさえ、天然ガスの輸入”額”が増えている一番の要因は「単価の上昇」であるのです。(参考:「2011年の貿易赤字理由を知る」ために作るグラフ)。

 そんな風に、貿易にまつわる値を眺め・考えてみた後に、公開されている関連記事を読んでみると、みすほ総合研究所のレポートが、わかりやすく・参考になりそうに思えます。

 2011年の貿易収支が赤字に転じたのは、原油などの輸入価格上昇が主因。資源価格の動向が当面の貿易収支を左右。

みすほ総合研究所のレポート

 「2011年の貿易収支赤字」の主要因は原発停止に伴う燃料使用”量”増加ではないのです。電気供給で用いる”燃料”を価格が安定して安価なものにしたい(価格が大きく変動するものにはしたくない)と言うことはできるでしょう。しかし、原発を止めたから貿易赤字になった主張は間違っているのです。

「2011年の貿易収支赤字」の主要因は原発停止に伴う燃料使用量増加ではない








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