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2013-04-13[n年前へ]

タイの水掛祭り(ソンクラーン)で軍事紛争戦略を考える!? 

 タイの1年は4月始まりなので、お正月休みは4月にあり、ソンクラーンと呼ばれます。この時期に行われるお清めのための人々同士の「水掛け」が、今では超無礼講な、水掛合戦と化しています。そんな水掛合戦の中にいると、少しだけ軍事紛争の国際戦略を理解することができるのです。

 水掛合戦の地を歩くとき、まず気づくことは、「武器(=水鉄砲)を持っていると、紛争に巻き込まれる」ということです。水鉄砲を持ち歩くということは(かなりな割合の人が水鉄砲を持ち歩いているわけですが)周りの人に宣戦布告をして歩いているようなものですから、すぐに周囲から水の集中砲火を浴びせられて、びしょ濡れになってしまいます。それはいわば、リアクション芸人の「押すなよ!絶対押すなよ!」より超鉄板の「さぁ押してくれ」ならぬ「さぁ俺を水鉄砲で撃てよ!」合図だからです。

 さらには自分が「水鉄砲」を持たなくとも、そういう「目立つ武器」を持つ・ひけらかす人の近くにいるべきではありません。そういう人が近くに居ると、気づくとその辺りが(あっという間に)「紛争地帯」に化してしまいます。とばっちりでびしょ濡れになるのがイヤならば、武器をひけらかす人たちに近づいてはいけないのです。それは、イラクや北朝鮮の近くに位置する国々の悩みと少し似ています。

 かといって、「武器を持たない白旗上げ」戦略が良いかというと…そういうわけでもありません。丸腰無防備でただ歩いていても、容赦なく水を掛けられることもありますし、たとえば自転車になんか乗っていたりすると、まさに通りにたたずむこどもの「標的」になり、ドブネズミのようにずぶ濡れになります。…パンツまでぐっしょり濡れつつ自転車に乗っていると、「軍隊を放棄する」と宣言した日本が自衛隊という名の「軍隊」を持ち続ける判断をしていることを、少し理解できるようになります。

 それでは、いっそのこと、強力な水鉄砲を持つのはどうでしょうか。たとえば、空気圧縮式で2500〜3500cc程度の弾丸(水)容量を持つ水鉄砲を使うと、10m以上先くの相手に容赦のない無慈悲な水攻撃をすることが可能です。あるいは、水鉄砲機能付リモートコントロールヘリ なんていうものも世の中にありますから、そういった武器を標準装備してみるのはどうでしょうか。

 …しかし、そういう戦略では資材物資を潤沢に持つ巨大な国には勝てません。たとえば、通りを歩いていると、水鉄砲ならぬ消防車からの放水ホース攻撃(しかもチームで!)をしていたりもします。消防車相手に水鉄砲で挑むのは、空飛ぶB29に竹槍で立ち向かうようなもので、太刀打ちできるわけがありません。アメリカみたいな国を敵に回してはイケないのです。

 しかし興味深いことに、消防車が容赦のない無慈悲な放水をしてる先に、その放水に負けず・向かっていく人々がいます。放水されても、満足げに水に向かっているのです。それを見ていると、アメリカも自爆テロには勝てないだろうな…ということを何だか納得できるようになります。

 ちなみに、町の通り・商店街の前などでは、こどもたちが店や家から次々と補給される水を、通りを走るバスやバイクなどに(タライなどに入れた水を)掛けています。後方支援・ロジスティックスというのは紛争戦略に非常に重要な項目です。相手がこどもたちとはいえ、こどもたちが位置する場所が支援物資が無尽蔵に得ることができる家のあたり…となると、これも決して敵にしたくはない相手です。アメリカがかつてベトナム戦線で勝てなかった歴史が当然のようにも思えてきます。

 そして最後に気づくことは、街中・通りのありとあらゆる場所に、「水鉄砲」と「ペットボトルに入れた戦闘用水タンク」が山のように積まれ・売られている、ということです。それらの兵器・燃料は、次々と買われていき、そして次々と新たな兵器が積まれていきます。それはつまり、戦争が起きると、兵器を供給する側や石油を売る側に、とめどなくお金が流れ込むのだな…ということです。それを水鉄砲の戦いを通じて実感できるのです。

 タイの水掛祭り(ソンクラーン)を眺めていると、何だか歴史の教科書に載っていたことや・この瞬間の新聞・TVニュースに載っていることが実感できるような気になります。

タイの水掛祭り(ソンクラーン)で軍事紛争戦略を考える!?タイの水掛祭り(ソンクラーン)で軍事紛争戦略を考える!?








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