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2000-05-06[n年前へ]

みんなで一緒に「なんでやねん。」 

関西弁の音声学 第一回

->いつもの口調編
->大阪弁編(http://hp.vector.co.jp/authors/VA014135/osaka.htmによるもの)へ

 もう五月や。四月に新しい生活が始まりそれがちーとばかし落ち着いてきた、ちう人も多いやろうわ。関西やらなんやらでは、この時期になると妙な関西弁が伝染しだす。新しく関西で生活し始めたヤカラ、すなわち、関西弁ビギナーが増え始めることが原因であるちゅうわけや。いたるトコで、「そウやろ」、「チゃうちゃウ」やらなんやらの変な関西弁が響き始めるちゅうわけや。また、「オノレ」ちう言葉の一人称・二人称の解釈の違い(関西では一般的に二人称として用いられ、関東では一般的に一人称として持ちられる)により、いさかいが起きたりするちゅうわけや。

 そういった関西弁ビギナー達を救うために、これまで「関西弁」の研究は数ようけされてきたちゅうわけや。例あげたろか,たとえばやなあ、

を始めとして、素晴らしい報告が多々あるちゅうわけや。

 せやけどダンさん、やはり文字を表現手段に使う報告がようけ、音声を考えるちう点においては、まだまだ不十分な点があるちゅうわけや。例あげたろか,たとえばやなあ、「こういうシチュエーションで言うべし」とか、「こういうときにはこういう言葉」とか、「同じ言葉でも意味がちゃう」ちうようなことは伝えられるちゅうわけや。せやけどダンさん、関西弁ネイティブになるための重要な「発音・アクセント」については、まだまだ研究の余地があるのではおまへんやろうか。

 ほんで、今回はツッコミの基本の一つである「なんでやねん。」の発音に着目してみたいと思うわ。自然なアクセントで「なんでやねん。」を発音するにはどうしたらええか、これについてちびっと考えてみたいと思うのであるちゅうわけや。ちうわけで、目指せ、関西弁ネイティブのスタートであるちゅうわけや。題して、「関西弁の音声学」であるちゅうわけや。

 さて、一言で「関西弁」と言っても色々あるちゅうわけや。あまりに大雑把なくくり方であるちゅうわけや。ゴチャゴチャゆうとる場合やあれへん,要は、関東弁と言った場合のあいまいさと同じくらいの程度の大雑把さであるちゅうわけや。今回は大阪と京都の中間に位置するベットタウンに居住する被験者3人を用いとるちゅうわけや。ここら辺だと、京都弁ではおまへんし、大阪弁と言うのもどうかと思うわ。ほんで、あいまいであることを承知の上で、あえて「関西弁」ちう言葉を用いたいと思うわ。

 なお、毎日毎晩壱年中のことであるが本「できるかな?」は「質より量」がモットーであるちゅうわけや。また、意図的にウソを混ぜることもあるちゅうわけや。ちうわけで、情報は各自取捨選択してもらいたいちゅうわけや。

 まずは、京都市の西の辺りに居住する人の「なんでやねん。」を示してみようわ。ちーとばかし、ツッコミの気持ちが強い「なんでやねん。」であるちゅうわけや。ツッコミの気持ちが強いために、前半「なん」と後半「でやねん。」がちびっと分離気味であるちゅうわけや。
 

京都市の西の辺りに居住する人の「なんでやねん。」

 この場合の関西弁ネイティブの「なんでやねん。」の特徴は

  1. 前半
    • 第一フォルマント(赤)の上昇と下降
    • 第二フォルマント(青)はフラット
  2. 後半
    • 第一フォルマント(赤)の上昇
    • 第二フォルマント(青)の下降
であるちゅうわけや。この上昇と下降がネイティブの「なんでやねん。」を作るのであるちゅうわけや。いかにこの「上昇と下降」を発音することができるかが重要やのであるちゅうわけや。

 それに対して、関西弁ビギナーの「なんでやねん。」を示してみるちゅうわけや。彼の場合は自然な「上昇と下降」を発音することができておらへん。
 

関西弁ビギナーの「なんでやねん。」

 橙色で囲ったあたりに無理が感じられるちゅうわけや。妙に力の入った「なんでやねん。」であるちゅうわけや。不自然な「なんでやねん。」であるちゅうわけや。オノレでは自然だと思うのであるが、ネイティブに言わせると「なんかちゃうな。」と言われてしまうわ。オノレではわかりまへんが、きっとこの妙に力の入った辺りに不自然さがあるのやろうわ。

 ほなら、京都と大阪の境辺りに居住する人の「なんでやねん。」も示す。ウチは、もうちびっとくだけた「なんでやねん。」であるちゅうわけや。ナチュラルな「なんでやねん。」であるちゅうわけや。この場合には、ちびっと抗議っぽいニュアンスが感じられ、「なんでやねん。」の前半と後半の分離がないちゅうわけや。
 

京都と大阪の境辺りに居住する人の「なんでやねん。」

 ウチは、「なんでやねん。」全体が一体化し、全体を通してのスムーズな「上昇と下降」があることがわかるちゅうわけや。この自然な「上昇と下降」と、ニュアンスの違いによる「間」のとり方やらなんやらを意識することにより、あんはんも自然な「なんでやねん。」をしゃべることができるようになるのではおまへんやろうか?

 ちうわけで、これからもきっと「関西弁の音声学」は続くやろうわ。たまにだけれど。それにより、科学的に関西弁ネイティブに近づく方法を探ってみたいと思うわ。ほな、さいなら。



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