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2011-03-13[n年前へ]

続『次のバス停は「高周波前」!?』 - 変な名前の由来編 - 

 先日、次のバス停は「高周波前」!? というアナウンスを聞き、思わずバスを降りてしまいました。理系心をくすぐられ、青い空の真下でカメラのシャッターを押し、「高周波前」バス停に向かって「ハイ、ち〜ず」とシャッターボタンを押してみたのです。

 今日は、そのバス停の由来を知りたくて、もう一度その場所に足を伸ばしてみました。交通機関はすべて止まっているので、自転車のペダルをシャコシャコ・シャコシャコとひたすら漕いで、バス停の辺りを走り回ってみました。この「高周波前」バス停の辺りを路地に入れば、そこはさまざまな工場があって、「町工場」の勢いを感じさせてくれます。

 …すると、バス停の近くに、その名もズバリ「日本高周波数株式会社」という名前の会社があったのです。調べてみると、それは70年以上前の昭和7年に設立されたという古い会社でした。現在調査中の段階ですが、この会社の近くにあったバス停だから、あのバス停は「高周波前」と名付けられたのだろう、と思います。

 「高周波前」は、地元の「お年寄り」いわく、

「高周波」は、第二次大戦中にはレーダーを作っていたために、「高周波前」辺りはただの農村だったのに空襲があったそうな」
「20年くらい前には、その当時の不発弾が見つかり、その処理のために横浜線が止まったこともある」
という場所です。

 調べてみると、「相互低周波株式会社」という名前からスタートした会社もあります。こんな会社の目の前にバス停があれば、それは「低周波前」という名前だったかもしれません。

 理系心をくすぐる「理系の散歩道」は、私たちの目の前にたくさん広がっています。さてさて、次はどんな場所に足を向けてみましょうか。

2011-04-09[n年前へ]

京都の街で「非ユークリッド幾何学」を体感しよう!? 

 京都市街は、基本的に道は東西に走るか、南北に走るかのいずれかです。たとえば、東西に走る「通り」は、丸太町通り・御池通り・三条通り・四条通り…といったものになりますし、南北に走る「通り」なら東大路・西大路・烏丸通り・堀川通り・河原町通り…といった具合になります。

 周辺部以外では、曲がりくねった道はなくて、道はすべて真っ直ぐ東<->西か南<->北方向に走っている。だから、どこに向かうにもただ、目的の方向に進み・曲がればいいだけだ。

「マンハッタン距離」と「続 理系風デート」
 マンハッタン距離を使うことができる街といえば、京都もそういう街のひとつです。東西南北方向に向けて、碁盤の目状に道が作られています。だから、太陽が真西に沈む春分と秋分の日近辺では、何本もの東西に走る道の向こうから夕日の光が差し込んでくる、ということになります。

春分と秋分の日には京都に行こう!? 

 だから、「南北という方向軸(=道は東西に走る)」をX軸として、「東西という方向軸(=道は南北に走る)」をY軸とすれば、すべての交差点はXY座標で示すことができることになります。だから、京都の交差点は「四条河原町(X=四条,Y=河原町)」とか「四条烏丸(X=四条,Y=烏丸)」とか「烏丸御池(X=御池,Y=烏丸)という具合に直行する2軸の座標値、すなわち通りの名前で表すことができ、その通りの名前を聞けば、どの場所に位置する交差点であるかが簡単にわかる、というわけです。XY座標で示される京都市街は、まさに「理系の散歩道」のために作られたような街、なのです。

 京都の街の凄いところは、小さな街なのに理系風散歩をすると、地球の曲率すら感じさせるところです。たとえば、烏丸御池から御池通りを「ひたすら真っ直ぐ」と西へ西へと進んでいくと、時代劇の撮影スタジオがあることでも有名な太秦近くに至ります。その太秦に辿り着く直前にある交差点が「三条御池」です。すなわち、東西に走る御池通りと三条通りが交差する交差点です。…何か「おかしくない?」「同じ方向に走るはずの”御池通りと三条通り”が交わることなんか不可能だよね?」と一瞬驚くわけです。

 けれど、理系の調味料がまぶされた頭の人ならば、こんな風に考えたりもするはずです。「そうか、オレは地球の上を移動していたんだよな。で、地球は丸いからは丸いんだから、そんな地表上の座標軸は2次元リーマン空間なんだから、その上では任意の2直線は実は必ず交わるわけだったな」「地球の丸さを考えれば、京都市街から離れれば、同じように東西に走る道同士が交差してしまうのもしょうがないな」「地球の曲率を意識してしまうくらい、太秦は京都中心からは遠い辺境の地だったんだな」…エトセトラエトセトラ。

 …もちろん、地球の曲率を感じさせるほどに京都の街が大きいわけでも、太秦が遠く離れた場所にあるわけではありません。いわゆる三条通りは、西大路通りのさら西を南北に走る「天神川通り(葛野中通り)」と交差した後に、道が進む方向を真西から西北方向へと変えてしまうのです。だから、三条通りの隣を平行に走り続けるはずの御池通りと交差することになり、「三条御池」という「本来ありえない名称を持つ交差点」が誕生してしまったというわけです。XY座標で示されるはずの空間の一部に、なぜかXX座標で表される場所が生じてしまったわけです。

 「理系の散歩道」を楽しむことができる人ならば、京都「三条御池」の交差点に行ってみると良いかもしれません。そこは小さな街のはずなのに地球の曲率をなぜか体感できるという、驚異のサイエンス・パワースポットなのです。

京都の街で「非ユークリッド幾何学」を体感しよう!?






2011-04-11[n年前へ]

交差点の位置を調べる「計算量」を京都の町で考える!? 

 京都の町では、多くの道が南北もしくは東西の方向に走っています。その結果、ほとんどの交差点は「直交する2つの道」により生まれ、そして、そんな交差点には「直交する2つの通りの名前を足された」名前が付けられるのです。

 だから、「南北という方向軸(=道は東西に走る)」をX軸として、「東西という方向軸(=道は南北に走る)」をY軸とすれば、すべての交差点はXY座標で示すことができることになります。だから、京都の交差点は「四条河原町(X=四条,Y=河原町)」とか「四条烏丸(X=四条,Y=烏丸)」とか「烏丸御池(X=御池,Y=烏丸)という具合に直行する2軸の座標値、すなわち通りの名前で表すことができ、その通りの名前を聞けば、どの場所に位置する交差点であるかが簡単にわかる、というわけです。XY座標で示される京都市街は、まさに「理系の散歩道」のために作られたような街、なのです。

京都の街で「非ユークリッド幾何学」を体感しよう!?
 そんな町で便利なことは、「記憶力に乏しい人でも交差点の場所がすぐわかる」ということです。

 もしもN本の東西の道と南北の道があるとしたら、交差点の総数はN^2ということになります。ということは、交差点の名称から場所を調べるための計算量は、O-記法で示すならO(N^2)もある、ということになります。これは、記憶力に問題がある私たちにはとても多すぎる量…です。

 ところが、いわゆる京都の街のような命名法を使っている場合には、つまり、「交差点の名称は、直交するふたつの通りの名称を結合することで作る」というルールにもとづくのであれば、東西・南北それぞれN本の通りの場所さえ覚えておけば、交差点名称から場所を調べるための計算量はたかだかO(2×N)≒O(N)にまで小さくなるのです。

 そんな計算量の削減・単純化ができるのは、「すべての道は直交する」という法則が、(「三条御池」というような特異点が生じることがない)京都中心街辺りではあるからです。

 交差点の信号機の下に掲げられた交差点の名称を長め、交差点の名称から場所を導き出すために必要な記憶量や計算量…そんなことを考え・楽しむことができるのが、「理系の散歩道」です。

 京都の街で、あなたの住む町で、「交差点の名称から場所を調べるための計算量」を考えてみることも楽しい」と思います。たとえば、あなたが知恵を絞れば、O(N^2)の計算が必要そうに思えるところをO(N log N)の計算量で済むようにすることができる…かもしれません。

2011-07-01[n年前へ]

これぞ「理系の散歩道・科学技術の散歩道」な「新田緑道」 

 私たちが歩く道沿い・毎日眺める風景の中に、技術や科学を感じさせ・理系心をくすぐる景色が隠れていることが多いものです。そんな景色を愛でたり・誉めたたえよう、というのが「理系の散歩道」というコーナーです。

 今日眺めた「理系の散歩道」は新横浜駅近くにある「新田緑道」です。暑い日差しを心地良く緑(みどり)が遮(さえぎ)る小道には、懐かしくも力強い機械や部品が詰まっていました。足下にギアやチェーン形状が埋め込まれているかと思えば(右写真に見える”ギア”は道路に埋め込まれた”ギア”なのです)、ふと座り込んだベンチもチェーンの形をしていたりします。そして、道の端を彩るのはプーリーやネジで、ところどころにボール盤やバープレスなどが置かれていたのです。

 使われなくなった水路の上に、真っ直ぐ2km近くにわたって作られた新田緑道は、これぞ「理系の散歩道・科学技術の散歩道」といえる存在かもしれません。何しろ、「プーリーの路」とかチェーン・プレート・歯車・機械…そんな風に名前が付けられているのが新田緑道です。

 緑(みどり)の匂いに包まれながら、金属で作られた機械を眺めつつ新田緑道を歩けば、とても幸せになると思います。新田緑道は、横浜市営地下鉄ブルーライン北新横浜駅からなら徒歩3分、JR新横浜駅からなら徒歩20分、自転車で行くなら鶴見川 新羽橋近く…にある「理系の散歩道・科学技術の散歩道」です。

新田緑道新田緑道新田緑道新田緑道新田緑道新田緑道新田緑道






2011-07-23[n年前へ]

住宅街の中にある「1/fゆらぎ」 

 マイ地に私たちが歩く道沿いや街中に、技術や科学を感じさせ・理系心をくすぐるモノや景色が隠れていることが多いものです。そんな景色を愛(め)で・誉(ほ)め讃(たた)えよう、というのが「理系の散歩道」というコーナーです。

 住宅街を自転車で走っていると、理系心の第六感レーダーが反応しました。そこで、周りを注意深く眺めてみると、第六感レーダーに反応していたのは小さなマンションの一階にある店に掲げられた、「1/fゆらぎ」という看板でした。

 「1/fゆらぎ」という言葉が流行ったのは、いつ頃のことだったでしょうか。90年代の中頃から後半くらいの時期、「心地良い」というキャッチフレーズで「1/fゆらぎ」を謳(うた)う扇風機やエアコンの広告をたくさん観た覚えがあります。

 今年、蒸し暑い時に扇子を仰ぐ人たちをたくさん見かけます。そんな扇子を手にする人を眺めると、「あの扇子で仰がれた風の速度はどのくらいなんだろう?」「その風で不快指数はどの程度低くなるのだろう?」などと考えてみたりします。

 今日眺めた「理系の散歩道」は、JR東神奈川から徒歩3分、「1/fゆらぎ」が建つ住宅街の遊歩道です。

住宅街の中にある「1/fゆらぎ」








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