hirax.net::Keywords::「ワープ」のブログ



2010-04-12[n年前へ]

拡散方程式で考える「あみだくじ空間」と「空間ワープ」 

 「あみだくじ方程式を1次元拡散方程式を使ってエクセルで解いてみる」で、あみだくじの(平均的な)動き方を1次元の拡散方程式で解き、アタリを引く確率分布を考えてみました。

 そのことに関して会話をしている中で、「とても新鮮で、着想が面白いな」と感じることがありました。そのアウトラインはいずれ平易な形で紹介させて頂くこととして、ここでは、マニアックで一般受けしそうにない部分を、マニアックで一般受けしそうにない記述で、そのとても面白かった話題を書いてみようと思います。

 といっても、hirax.netを読みに来る人は、これすなわち、一般的ではないとってもニッチ(≠リッチ)な変わりものであるわけですから、そういった方には、ちょっと面白いのではないか・楽しめるのではないか、と思います。

 前回紹介したように、あみだくじのアタリの場所がわかっている時には、その(平均的な)動き方を1次元の拡散方程式で解くことで、(平均的には)ここがアタリやすい場所だ、ということを求めることができます。アタリの場所が中央でなく、横線が十分にたくさんある場合には、アタリが左に寄っているなら左端、アタリが右に寄っているなら、右端がアタリやすい場所になります。横線の数が少なく、アタリが端にそれほど近くない場合には、アタリの真上がアタリの確率が高くなります。

 端っこが確率が高くなるのは、両端がノイマン条件になっていて、両端で折り返される部分多重に重なるから、ということになります。部屋の中のゴミの動きをランダム・ウォークで考えたとき、四隅にゴミが滞留しやすいのと同じ具合です。

 そんな話をしているとき、「じゃぁ、こんな線を引いたら?」「あるいは、こんなのは?」と言いながら、下図のような2つのケースのあみだくじ(の横線)を引かれました。…これは、ちょっと、とても面白い新鮮で面白い着想だと思いませんか? 確かに、そういう線を、私たちはよく引きます。けれど、そういうことを、年を経るうちに、いつの間にか忘れてしまっていたことに気づかされました。

 ちなみに、上図のケースAのような場合、あみだくじを表現した1次元の拡散方程式で言うと、拡散の速さが速くなることになります。短い時間(あみだくじで言うなら、縦方向の距離で)で、アタリの場所が遠くまで移動していくことになります。つまり、遠くと遠くの空間を結び付ける、これは一種の”ワープ”する線です。

 そして、上図 ケースBの場合には、左右の両端が、「ノイマン条件」でなく、「周期境界条件」に(線の数がある分だけ)変化していきます。この場合も、結局は、一種の”ワープ”する線であって、それが空間の「反対側」どうしを結び付けている、という具合です。

 結局、これらの”縦線をまたぐ”ような線は、離れた場所を強引に結びつけ、その空間どうしを”ワープ”できるようにすることで、隣り合った空間にさせてしまう、という恐ろしい効果をもっていることを、その当たり前のことを、空間内の拡散現象を表現する拡散方程式を解く、ということをする中で眺めると、ことさらに強く印象付けられます。

 拡散方程式で考える「あみだくじ空間」と「空間ワープ」…何だか、そんなことを考え始めると、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス 」のように、不思議で魅力的な迷路のような空間中を探検しているようで、とても面白い心地になりませんか?

 この話題、もう少し、続きます。

 だってそうでしょう?箱は開けてみなきゃ、中身はわからない。電話は出てみなきゃ、相手はわからない… 少なくとも、旧式の電話はね。
 人の心だってそうよ。…こうして…ノックしてみないと、わからないの。

加納朋子「螺旋階段のアリス

拡散方程式で考える「あみだくじ空間」と「ワープ現象」






2010-04-13[n年前へ]

拡散方程式で考える「あみだくじ空間」と「(見えない)時空間ループ」 

 拡散方程式で考える「あみだくじ空間」と「空間ワープ」の続きです。前回は、”縦線をまたぐ”ような線が、離れた場所を強引に結びつけ、その空間どうしを”ワープ”できるようにすることで、隣り合った空間にさせてしまう、という何やら不思議な存在であるのかもしれない、ということを考えてみました。

 それでは、次は、こんな場合ならどうしたら良いでしょう?今度は、横線同士が交差していたり(下図のExample1)、同じ縦線同士を繋ぐ線があるような場合(下図のexample2)です。

 あみだくじを拡散方程式で解くときには、縦線の「横方向」が「空間」を意味します。それに対して、「縦方向」はすなわち「時間」を意味することになります。「横線同士が交差する」ということは、異なる縦線の間で「時間」が共通のものでなくなってしまう「奇妙な線」であるように思えますし、「同じ縦線同士を繋ぐ線」はまるで過去や未来へ「タイムトリップ」する「不思議な線」に見えます。

 今回考えてみたいのは、こういったスペシャル技を、ちまり時間軸を捻じ曲げるような「線」をどう扱うか、ということです。「どう扱うか」というのは、「どう考えると、単純に思えるか」ということです。「単純で共通なルールで記述できるか、と言い換えても良いかもしれません。

 なぜかというと、この「線」について考え出すと、少し「スッキリしない」というか「気持ちが悪い」ことが出てくるからです。具体的には、「どの経路を考えてみても、通らない線がある」とか「横線に対して、(両方向に進む経路があって欲しいのに)片方向に進む経路しかない」、あるいは、「線を追いかけていくと、下から上に遡らなければいけない部分がある」ということです(下図参照)。

 この「時空間を歪ませるようなスペシャル線」は一体どう扱う・どう考えれば良いのでしょうか?そんなに考え込むことでもないのかもしれませんが、あみだくじというものを考えるとき、「通らない線がある」「横線に対して、(両方向に進む経路があって欲しいのに)片方向に進む経路しかない」「線を追いかけていくと、下から上に遡らなければいけない部分がある」というのは、あまりに「おさまりが悪いこと」であるように思われます。

 そこで、こう考えてみることにしました。下図のように、時間を捻じ曲げるているような線の部分には実は「縦線が隠されている(そういう仮想縦線を考えてみる)」と考えてみるのです。そして、その(仮想)縦線は最下部と最上部が繋がっていて、最下部からさらに下にさがると…アラ不思議、最上部にワープして、そこから下に降りていく、という具合に考えてみるのです。それが、下の図です。

 すると、例外的な現象に思えていた不思議なことが、ごく当たり前の普通のあみだくじに見えてきます。あみだくじを辿る線は、いつでも下方向にしか移動しません、つまり、「線を追いかけていくと、下から上に遡らなければいけない部分がある」という現象は消えますし(仮想線の最下部でも、(仮想線の最下部と最上部が連結されているだけで)その空間上は下に落ち続けているのみです。)、「(いろいろな経路を考えたとき)通らない線」というものもなくなりますし、「横線に対しては、両方向に進む経路が必ずある」という、ごくあたりまえのあみだくじに思えてきます。(下図参照)

 というわけで、横線同士が交差していたり、同じ縦線同士を繋ぐ線がある時には、そこには実は見えない縦線が隠されていて、その縦線はたとえるなら上下両端が繋がったことで「明確な端を持たない」ということだけが特殊だ、と考えてみるのです。「実は目には見えづらい空間(縦線)があり、そこでは時間軸は永遠のようでなぜかループしている」というわけです。

 こんな風にあみだくじを、あみだくじの「スペシャル線」から考えてみると、何だか不思議なくらい惹かれます。そして、考えていくうちに、変に思えていたものが、いつの間にか、ひとつの綺麗な星座のように見えてきます。それは、とても面白い感覚です。

 数字がバラバラに書いてあって、その数字を順番になぞっていくと最後に絵ができる"Connecting Dot"ってパズルがあるじゃない? バラバラだったりしても、途中で間違っているように思えたりしても、色々と続けていたら最後に何か浮かび上がってきたりしたら、それで良かったりするのかな?って時々思ったりするの。

種ともこ 「どこかの学園祭コンサートで」
 (目の前にいる人・目の前にある悩みを)ボーと見ていると、おもしろいものが見えてくる。その面白いものが見えてくることを"コンステレーション"と呼びます。"コンステレーション"というのは「星座(を意味する言葉)」です。

河合隼雄 「河合隼雄 その多様な世界―講演とシンポジウム
 
 星が散らばっている時、その星を結んだ瞬間が一番楽しい。

浅草キッド 水道橋博士
 

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2010-04-16[n年前へ]

「あみだくじ無限ループ」を生み出す「(見えない)時空間ループ」 

 「なぁ、あみだくじで無限ループって作れるとおもうか?」という面白いスレッドを読みました。

 なぁ、あみだくじで無限ループって作れるとおもうか?
 このスレッドの中では、結局、「終わらないあみだくじは存在しない」という結論になっています。

 けれど、普通のあみだくじでなく、拡散方程式で考える「あみだくじ空間」と「(見えない)時空間ループ」で扱ったような、横線同士が交差していたり、同じ縦線同士を繋ぐ線があるような、普通ではないけれど「よくやりがちな」あみだくじなら、どうでしょうか。しかも、前回考えたように、そういう特殊線には実はゴールとスタート地点が繋がっている縦線が隠れているとしたら、どうでしょうか?たとえば、前回描いた下のような例です。

 「ゴールとスタート地点が繋がっている縦線」があるとするならば、「終わらないあみだくじ」は存在する。けれど、そのスタート地点もゴール地点も表には出てこない(隠されている)からその存在を意識しないだけ、ということになります。具体的には、上図に緑色の線で描いた経路です。この経路は、「終わらない」「無限ループ」になっています。ただし、その経路は(あみだくじの参加者にはスタート地点が)見えない「仮想縦線」なので、その存在に気付かないだけ、という具合です。

横線同士が交差していたり、同じ縦線同士を繋ぐ線の後ろに「仮想縦線」が隠れていると考えてみると、あみだくじの「(スタート地点とゴールとの)一対一対応といった特性はそのままに(それ以外の特性も前回考えたようにそのままに)、「あみだくじの無限ループ線」が存在しうる、ということになります。

 何だか、ちょっと面白いと思いませんか?



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