1999-12-19[n年前へ]
■母に捧げるバラード
宿題は自分でやってくれぇ
今回の話は、とあるメーリングリストから始まる。仮にそのメーリングリストを"family-ml"と名付けておく。そのfamily-mlで論争が起きたのである。
メーリングリストで論争が起きることはよくある。しかし、このfamily-mlは通常のメーリングリストではなかった。実は、とある家族を構成員とするものであった。そう、この家族は専用のメーリングリストを持っているのである。そこで、この論争は起きた。
各登場人物の紹介は随時していこうと思う。
| To family-**@hirax.net From 母 Subject: レポート課題がわからない みなさんお元気ですね。 大気の持つ質量あたりのエネルギーを、次の二つの例について求めなさい。 「下」 赤道付近の地表面付近の大気 「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気 結果を次のような表にまとめなさい。 さて、インドの話はいらしたときにします。大変な国ですが、行って良かったです。 母 |
この「母」はいまはやりのヤンママではない。戦中に生まれたお年の方である。去年辺りから仕事のない日に大学へ社会人学生として通うようになったのである。
| To family-**@hirax.net From 兄 Subject:Re: レポート課題がわからない > レポート課題 SOSです。だれか教えて下さい。 この「母」のレポートって「弟」の得意な専門の問題じゃないの? > 高さ 1500m(=15Km) あと、15000mの間違い? 兄 |
「兄」はとあるWEBのwebmasterである。「母」の年からすれば、そうそう若くもないことがわかる。
| To family-**@hirax.net From 父 Subject:Re: レポート課題がわからない >結果を次のような表にまとめなさい。 父 |
「父」はhiraxという名前を数十年名乗ってきた、元祖hiraxである。
| To family-**@hirax.net From 母 Subject:Re: レポート課題がわからない 今年は地球科学概論をとった。確か昨年「兄」が次は地球科学がいいと、 母 |
確か、この「母」は去年は「応用化学」をとっていた。なぜ、そういう無理なことをしたがるのだ。
気持ちはわからないでもないが、もう少し考えて欲しいものである。
| To family-**@hirax.net From 兄 Subject:Re: レポート課題がわからない > 今年は地球科学概論をとった。確か昨年「兄」が次は地球科学がいいと、 いや、私が言ったのは「どうせ習うなら自然科学史みたいなのの方がいいよ。」です。「地球科学概論」だなんて言っておりません。 >自分の責任のあることを「弟」に振ろうとしていませんか。 いや、私に責任はないと思うのですが... >だれでもいいです。「弟」、助けてくれますか? そうそう > 「弟」 兄 |
| To family-**@hirax.net From 弟 Subject:Re: レポート課題がわからない >そうそう > 「弟」 地球科学概論なんだから、宇宙・地球物理専攻の人がやるべき 最近、修論のまとめで忙しいです。 弟 |
| To family-**@hirax.net From 兄 Subject:Re: レポート課題がわからない > 地球科学概論なんだから、宇宙・地球物理専攻の人がやるべき しかし、これってほとんど化学工学ではないでしょうか。だから、 兄 |
| To family-**@hirax.net From 母 Subject:Re: レポート課題がわからない >>> そうそう助けてやれよ > 「弟」 そろいもそろって、冷たい兄弟ですね。 母 |
うちの「母」はこうなると怖い。
| To family-**@hirax.net From 「妹姉」 Subject:Re: レポート課題がわからない >>>> そうそう助けてやれよ > 「弟」 >そろいもそろって、冷たい兄弟ですね。 そういうと、私まで一緒みたいに聞こえます。やめて下さい。兄妹とか姉弟 「妹姉」 |
| To family-**@hirax.net From 父 Subject:Re: レポート課題がわからない 「母」がせっかく苦労してレポートをと考えているので、hiraxファミリーの 多分、「兄」や「弟」だったら、チョチョイだから。 > どうせ習うなら自然科学史みたいなものの方がいいよ。 父 |
| To family-**@hirax.net From 兄 Subject:Re: レポート課題がわからない >多分、「兄」や「弟」だったら、チョチョイだから。 >今朝、「父」は物理的な意味だけは、10分間講義してあげました。 そんなに若くはない年で働きながらも、大学へ行こうとする「母」の 兄 |
さて、配達された最後の手紙が以下である。
| To family-**@hirax.net From 兄 Subject:Re: レポート課題がわからない 昨日の電話など、何やらプレッシャーが感じられてきたので、適当に問題にとりかかって まずは、簡単そうな位置エネルギーと運動エネルギーから。「地球科学概論」 「問題」 「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気 「上」「下」それぞれについて 「回答」 ![]() 「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気 h=15000(m) 「下」 赤道付近の地表面付近の大気 h=0(m) を代入し、 「上」 1.47*10^(5) J 「下」 0 J を得る。 運動エネルギーDは速度v(m/s)に対して、 ![]() 「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気 v=20(m/s) 「下」 赤道付近の地表面付近の大気 v=5(m/s) を代入し、 「上」 200 J 「下」 12.5 J を得る。 さて、次に「A.内部エネルギーの温度に比例する部分、B.内部エネルギーの水蒸気に比例する部分」 「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気 (300-6×15)K 最後に「B.内部エネルギーの水蒸気に比例する部分」であるが、水が液体から気体に変化するときのエネルギー収支を考る。蒸発熱が2498J/gであることを考え、計算を行う。 「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気 水蒸気0g なお、検算も読み直しもしておりません。 兄 |
ごくまれにではあるが、「課題を解いてください」という大学生からのメールが届くことがある。そういうメールを見るたびに「うーむ...」という気分になっていたのである。しかし、まさか自分の親の宿題をやるはめになるとは。しかもこの年になって...
2005-02-06[n年前へ]
■二機の飛行機雲の交差点
河口湖近くで空を見上げると、飛行機雲が十字型に交差している。ただ交差しているだけでなくて、ちょうど交差した点だけ飛行機雲が太くなっている(ように見える)。座標が交差するようなコースで、1機目の通った後は水蒸気量などが違ったのだろうか?それとも、(眺める)奥行き方向にはずれていいるけれど、反射光が重なって明るく見えていたのだろうか?
飛行機雲の右手後ろには、夕日を背にした富士山が見えた。
2007-07-09[n年前へ]
■続「分業・神の見えざる手」と「ワットの復水器・調速機」
ワットは「経済的に引き合う蒸気機関」を生み出した。その過程を辿ってみると、興味を惹かれることが二つある。一つは蒸気機関へ復水器を導入したことで、もう一が、調速機を備えるようにしたことだ。
シリンダという同じ場所で水の温度を上げ下げし、水を液体にしたり気体にすることで動力を得るのではなく、シリンダは常に高温に保ち、シリンダから離れて置かれた復水器で水蒸気を冷やしつつ、動力を得るように変えたことだ。同じ場所で、水の温度を上げ下げすることで水に体積変化をさせるのではなく、離れ異なる場所に温度差を設け続け、その間に水を循環させることで非常に効率良く動力を得る。それは、経済世界の「分業」を連想させる。人と人の間で、あるいは、国と国でも「分業」することで富が増大し、多くのものが生産される、というアダム・スミスの考えのようだ。ジェームズ・ワットの蒸気機関が備える復水器は、異なる場所を異なる状態に保ち続けることで、動力を得るまさにアダム・スミスの「分業」に見える。
そして、ワットが蒸気機関に採用した「調速機」はアダム・スミスが言及した「神の見えざる手」そのものである。
遠心調速機は回転する軸の回りのおもりが遠心力により外に振れることを利用する。蒸気機関の場合であれば、おもりの外への振れがシリンダーへ蒸気を導くバルブを閉じる方向に作用するようにしておく。出力が上がり回転が速くなるとおもりが振れ、バルブを閉じようとし、出力を抑える。出力が下がるとおもりが戻りバルブを開こうとし出力を上げる。 この逆方向の制御(負帰還)の微妙なバランスにより機関の出力を一定に保つ。機関に負荷がある場合でも作用するのでより正しくは出力よりも名前通り速度調整を行うものである。 Wikipedia 「調速機」蒸気機関の回転が速くなると、重りが繋がれた「手」が遠心力で上に上がる。遠心力で上がる手は、蒸気機関のバルブを少しだけ閉じる。そして、回転速度が元に戻る。そして、回転速度が低下すると、重りを持つ「手」に働く重力が遠心力に勝り、手が下がる。そして、蒸気機関のバルブを開く。そして、蒸気機関の回転速度は元に戻る。これは、まさに「神の見えざる手」である。遠心力と重力のバランスを原動力として、オーケストラをタクトで指揮する指揮者のように、蒸気機関の回転速度を制御する「調速機」、これはまさに経済活動を操る「神の見えざる手」である。「人々が自らの欲求と窮乏の追求することが、経済を発展させ富を生み出す」という、「見えざる手」と瓜二つに見える。
...he intends only his own security; and by directing that industry in such a manner as its produce may be of the greatest value, he intends only his own gain; and he is in this, as in many other cases, led by an invisible hand to promote an end which was no part of his intention. Wikipedia 「国富論」アダム・スミスがジェームズ・ワットから得たものは、「技術イノベーションの重要性」だけでなく、実は「分業」や「神の見えざる手」といったものへのインスピレーションや、それらを確信するバックグラウンドでもあったのかもしれない。そんな想像をしながら、経済学と工学を繋げてみるのも面白いかもしれない。







