hirax.net::Keywords::「順序」のブログ



2006-05-10[n年前へ]

「グレアム口調」と「リリースする」 

 オープンソースマガジンのハッカー養成塾を買った。川合史朗さんが書かれた「パワーハッカーへの道」を読んで、「そうか!(私の勝手なイメージ上の)ポール・グレアム口調は川合史朗さんの口調だったのか!」と今更ながら気づいた。私の中のレイモンド・カーバーは村上春樹の口調で文章を書くのだが(この場合は順序が逆か?)、それと同じパターンだったことにようやく気づいた。

 アイデアは生ものであり、早く料理しないと傷んでしまうからだ。… 一つの解決策は「リリースする」ということだ。… リリースとは文字通り、手放すことだ。直したい箇所はたくさんあるし、試したいアイデアもたくさんあるけれど、「現状は現状として認めてひとまず手放してみる」ということが要点だ。 「ハッカーは頭の中を掃除する」  川合史朗

2008-03-28[n年前へ]

「物語が語られる順序」と「因果関係」 

 「ゲームの右と左 マリオはなぜ右を向いているのか」という「上手と下手」に関する記事を読んだ。こういった、上手・下手もしくは左・右といった辺りのことは、スライド・デザインにおける「上手と下手」、もしくは、「上手と下手」のブログで調べたこと・感じたこと・書いていることから、特に自分の中で変わっていることはない。

 けれど、左右や上手・下手という軸でなく時間軸というものを考えると、たとえば、物語が語られる時間軸というものについて考えると、いくつも新しく感じたこと・納得したことがあった。そのひとつが、北村薫「ミステリは万華鏡」(集英社文庫)の中で語られていた「順序」というものである。

 最も簡単な物語の語り方は、はじまりから始め、物語が終わるまで、あるいは聞き手が寝るまで話すというものである。
   「小説の技巧」(白水社)ディヴィッド・ロッジ

 「物語が語られる時間軸」というのは、物語が時間軸のどの地点から始まり(読者に対し語られだして)、どの時点に収斂していくか 、ということである。もしも、いたって原始的な物語であれば、背景から話を始め、原因・過程を話し、そして結果を話すことになる。

 あるいは、その逆に、たとえば推理ドラマであれば、まず冒頭で、「事件が起こる前・過去」と「ぼやけた形で描かれる事件が起こった瞬間」が描かれる。そして、そのあとの物語は、その瞬間・時点へと逆に遡っていくのが普通である。つまり、結果から原因・背景へ向かっていくのが通常のミステリの「方向性」である。
 語りの順序における斬新な実験の例として思いつくものは、ほとんどが犯罪や悪行や道徳的・宗教的な罪に関するようなものである。
   「小説の技巧」(白水社)ディヴィッド・ロッジ
 だからこそ、たとえば刑事コロンボの場合は、その物語が語られる時間方向性が、原因→結果という時間の流れそのまま、というところに「意外性」があったわけだ。

 北村薫は「語りの順序が、現在→過去というように流れる物語」に関して、このようなことを書いている。内容を抜粋するために、少し書き方を書き直すならば、それはこのようになる。

 ピラミッドを逆さまにしたように、最後に「出発点・背景」が描かれれば、その一点は、物語の冒頭から語られた「それ以降に起こったこと」のすべて重みがのしかかる。そして、出発点はその重みに歪み、過去と未来のコントラストは、ますます鮮やかになるのだ。

 「普通人間のいちばん好きな考え方は因果関係です」と言ったのは心理学者の河合隼雄で、「人は、因果関係を納得しやすい。というか、因果がないと、物事の関係性を納得しにくい生き物なんだよね、人って」と書いたのは、小説家の新井素子だ。

 彼らの言葉を、「物語が語られる順序」と「因果関係」が描かれたパズルのピースを並べようとするなら、どんな風に人は並べたがるものだろうか。あるいは、そんなピースに描かれた模様は、人によってどのように違って見え、どのように違って組み合わされるものだろうか。

2017-12-05[n年前へ]

Microsoft Excelで "=-1^2" が "-1"ではなくて"1"になる「理由」 

 Microsoft Excelで "=-1^2" が "-1"ではなくて"1"になるのが「なぜだろう?」というtweetを興味深く読み、そこから辿り着いた20年前のメーリングリスト記事が面白かったので、簡単なメモ書きをしてみます。メモ書きなので、面白い記事へのポインタと(その記事に対する)わずかな感想を書いただけの日記記事です。

 まず、この計算順にまつわる問題を考える時には、" Warning: Excel Performs Negation Before Exponentiation"のタイトルにもなっているように、Excelという一種のプログラミング環境上での、"negation"と"subtraction"という異なる2演算子の計算順序の違いを区別する必要があります。つまり、

=-A1^2
は"=(-A1)^2"と計算されるけれど、
=1-A1^2
は"=1-(A1^2)"と計算されるというように、前者の"negation"と後者の"subtraction"が異なる演算子として区別され・違う演算順序が適用されるという話です。

 次に、20世紀最後の年、つまり西暦2000年1月13日の20:18:46にDoctor Petersonがメールで書いている文面がとても参考になります。それは、"negation"のような単項演算子は”exponent”のような二項演算子に優先して演算されるものだったから、それをただ踏襲すると、こんな計算順序になるよね、というものです。「Lotus 1-2-3との互換性を重視した」わけではないけれど、プログラミング言語の過去経緯を踏まえて考える話だよね、というものです。

 そして何よりも、西暦2005年の12月16日にErikが書いているように、Windowsのメモ帳で "msgbox -2^2"と書いてから、そのファイルをtest.vbsという名前で保存して、もしもダブルクリックしたならば、(マイナス4ではなくて)"4"という答えが書かれたメッセージボックスを私たちは目にするよね。この例でもわかるように、エクセルの「ダメな話」として眺めるのではなくて、コンピューター科学の「興味深い話」として眺めるべき話じゃないか?というコメントが、とても参考になると思います。

So I think this isn't bad math on Excel's part, but good computer science.

2020-01-22[n年前へ]

「エクセルの計算順序」から「コンピュータの歴史」を感じよう! 

 4月中旬発売のソフトウェアデザインで連載最終回になるので、「幻の第一回ボツネタ」を読めるようにしてみました(読みやすい形でのアップロードはまた別にやっておこうと思います)。
「エクセルの計算順序」から「コンピュータの歴史」を感じよう!



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