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2011-02-20[n年前へ]

カメラマントーク「宮嶋茂樹 v.s. 高橋邦典」前編 

 「同じ道を極めた3人のプロフェッショナルが司会なし台本なしで語り合う」という、「ディープピープル」という番組の「#8 戦場カメラマン」を観る機会がありました。それがとても興味深くて、思わず語られていた内容を(少しマニアックかもしれませんが)メモしてしまいました。…というわけで、そんなメモの「前編」です。

宮嶋茂樹「高橋さんの写真は、私も何度も拝見させて頂いているんですが、どうやって撮ったかわからないですね。(たとえば、リベリアの写真)あのRPG(対戦車兵器)出してる一人だけだったら、俺でも何とか撮れるかもしれないけれど、手前の人をスローシャッターに入れた辺りは、いまだにどうやって撮ったかわからない」
高橋邦典「あれは、手前の人が(ただ)入ってきたんです。橋を隔てて、反政府側と政府側とが撃ち合いしてたんです。僕らは(当然)政府側の方から撮っていたんですが、10〜15人ぐらいの兵士が入れ替わり立ち代わり、隠れたところから走って来て道の真ん中に出て、ボーンと撃ってまた向こうに行くわけです。その人たちに僕らはくっついて出て行って、撃つ瞬間にパパパパッと撮って、また隠れに戻るということを繰り返していたんです。それ、僕は当然RPG撃ってる奴を撮っていたら、(手前の)彼がシュッと(ファインダーの中に)入って来たという・・・だからたまたまのラッキーなんですよ」

宮嶋茂樹「高橋さん、ワイド系がお好きなんですか?」
高橋邦典「はい。最近はもう24mm-105mmのズームレンズが多いんですよね。使い勝手が良くて、これ一台で90パーセント撮りますね」
宮嶋茂樹「私は良く使うのは24mm-70mm、それと70mm-200mmのスームレンズで、すぐ撮れるようにしているんですけど、高橋さんは16mm, 35mm, 24mm-105mmの他に、もうちょっと望遠はないんですか?」
高橋邦典「70mm-200mmを持ってます。それは、必要な時は持って行きますよ」
宮嶋茂樹「高橋さんは、ワイド系中心だと言うけど」
高橋邦典「やっぱり、撮った時に自分が近づいてると、その写真を見た人も同じ距離感になると思うんですよ。そう思いません?ワイドで撮ったら、撮られた写真を見た人もその距離感で写真を見ると、ぼくは思うんですよね。それだけ現実感があるっていうかね、伝えられるんじゃないかっていうのはありますね」
宮嶋茂樹「私から言わせると、他のカメラマンにアングルを譲らない、ってのはありますよね」
高橋邦典「それはありますね。16mmとかでガッと迫るやつとか」
宮嶋茂樹「他に3,4人カメラマンいて、16,35mmで一番いいアングル取って占めちゃったら、譲りたくないですもんね。私ら写真週刊誌出身だったんで、16mmっていうのは、犯人送る車を撮る時に一番撮りやすいんで(笑)」
高橋邦典「(窓ガラスにカメラ押し付けて)ガシーンとやるやつですね(笑)」
宮嶋茂樹「どうしてもあのイメージしかないんですよね、16mmって(笑)」
高橋邦典「あと、そういう時はちょっと(他のカメラマンの)首根っこを引っ張ったりして(笑)」
高橋邦典「被写体の感情が強ければ強いほど、構図とか光とか関係無しに、そのままストレートに撮っても強力な写真になると思うんですよね。自分の中では、一番大事なのは感情。感情が第一で、その後、光と構図が三本の柱なんですよ、僕の中では。その三つが揃った時パーフェクトな写真になるんですけど、滅多にそういうことはないじゃないですか。ただ、構図は100パーセント、カメラマンがコントロールできるんですよね。だから、実力が一番出るのは構図だと思うんですよ。そういう意味で、構図は大切だと思います」
 さらに、続きます(カメラマントーク「宮嶋茂樹 v.s. 高橋邦典 v.s. 渡辺陽一」中編)

2011-02-21[n年前へ]

カメラマントーク「宮嶋茂樹 v.s. 高橋邦典 v.s. 渡辺陽一」中編 

 カメラマントーク「宮嶋茂樹 v.s. 高橋邦典」前編の続きです。前回分では、ほぼ狂言回しに徹していた”戦場カメラマン”渡辺陽一も、最後の一言がいい。

高橋邦典「今僕らが怖いのは銃撃とかではなくて、誘拐と群衆が怖いんですよね。群衆って、たとえ50人でも、1人、敵意持った奴が「(ぼくたちを指差して)うわぁ、この外国人だぁ」と言っただけで襲われるでしょう? ソマリアなんか、それで相当死んだでしょう」だから、群衆の中にいる時に、孤立しない」
宮嶋茂樹「目立たない」
高橋邦典「そう、目立たない。だから、そういうヤバい時には一人で行かないですよね」
宮嶋茂樹「フリーって言っても、本当、お金からはフリーになれないですからね」
高橋邦典「ここに行きたい、と思ったって、先立つものがなければ結局行けないわけじゃないですか、現場にも。今、僕自身は大手メディアからフリーになったんで、その辺は凄くわかるんですけど、もうニュースとかでは勝負できないですよね。フリーランサーになると。使える金がないじゃないですか。大手メディアだと、ネットワークとかニューヨークタイムズとかはボンボン金を使って、ニュースの取材を最前線でやっていくわけですよ。そうすると、もうフリーの財力では勝てない。だから、フリーになったら、特に若い人だったら、そういった大手のメジャーなメディアが撮らないものを独自の視点で撮っていかない限り、これからサバイブしていくのは難しいんじゃないかなと思いますね」
宮嶋茂樹「いい時 right time、いい場所 right place にいれば、それで仕事はそこそこ半分以上成功したようなもので、同じ時期でも違う場所にいたら全然ダメですし、同じ場所でも一歩遅れたり・一歩早すぎたら全然ダメなケースもあるんでね」
高橋邦典「まぁ、そうですよね。だから、right place, right timeに行ければそれでほとんど撮影終了、…まぁ(笑)、終了じゃないですけど、八割がたはね(終了みたいなもので)」
渡辺陽一「僕自身、今まで振り返って行きますと、right place, right timeと真逆のwrong place, wrong timeばかりだった記憶があります。今でもright place right timeに突っ込んで行こうとしているんですけど、 今だに間違えてしまうことが多々あります。ただ、気をつけていることは、…とにかく、成田から出ちゃうこと」



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